みたいのプロトタイプ最終発表会レポート~f∞studio program #01

2023年1月に始動した、コニカミノルタ 「envisioning studio(エンビジョニング・スタジオ)」主催の『f∞ studio program (フー スタジオ プログラム)#01 in SHIBUYA』。その3ヶ月間に及ぶ体験型プログラムが、3月13日(月)に全てのスケジュールを終了しました。今回は「SHIBUYA QWS(シブヤ キューズ)」で開催された『みたいのプロトタイプ最終発表会』の様子をレポートします。

『f∞ studio program #01 in SHIBUYA(以下、f∞ studio program )』は、“写真”の周縁の探索を起点に「未来のみたい」に挑戦する、ビジョンプロトタイピングワークショップです。参加者は、連続ワークショップを通じて“みたい”のプロトタイピングを開発しました。“みたい”と“見える”の間にある、まだ見ぬ“写真”の価値とは。その答えを求め、渋谷をフィールドにプロジェクトを実施しました。関係者全員で探求する、制作型のプロジェクトです。

様々なバックグラウンドを持つ約30名の参加者が、4回のワークショップを通して8つのみたいを生み出し、チームでプロトタイピングに挑戦してきました。

チームの“みたい”が表現されたプロトタイプのお披露目の場が、この『みたいのプロトタイプ最終発表会』。過去4回のワークショップを簡単に振り返ったあと、各チーム10分の持ち時間の中で、参加者だけでなくオンライン視聴者も含めたオンライン視聴者も含む観覧者が見守る中、各チーム10分の持ち時間の中で活動の成果を発表しました。成果発表を受けて、事務局から最優秀賞の発表も。

ファシリテーターを務めたのは、「シブヤキューズ」のコミュニティマネージャー加藤翼、「envisioning studio」の神谷泰史が、プログラムの概要やワークショップの説明を行いました。また、成果発表を受けて、メンターとして「f∞ studio program」に協力いただいた北桂樹さん(京都芸術大学 大学院芸術研究科 博士課程在籍)よりプロジェクトの総評をいただきました。

では、ここから先は各チームのプロトタイピングをご紹介します。「将来の写真のスタンダードとなるものが、この中から1つでも2つでも出てくるんじゃないか。そんな可能性に今からワクワクしています」。プログラムの冒頭で神谷が期待した通り、どのチームの発表からも“未来のみたい”が伝わってくるプロトタイプでした。

現在と未来の間とその先の未来:地球をモチーフにして、“その先の未来”を解き明かす

現在からの延長線上に想像し得るものを近未来としたときに、想定される範囲外にある“その先の未来”をみたい。その思いを叶えるべくプロトタイピングを進めたAチーム。地球をA4用紙500枚にプリントし半分に切断した“近未来”と、独自の装置でぼやけた地球を壁面に映し出した“その先の未来”を比べて、「“その先の未来”とは見えそうで見えない未来である」という結論を導きだしました。


光の積分:光のはじまりを、光を砕くメガネで能動的に見る

ペットボトル越しに炎を撮ったらおもしろいんじゃないの? Bチームのアイデアの元になったのは、そんな実体験から生まれました。プロトタイプは実験用のフラスコをメガネのレンズに置き換えたもの。「ライトミルグラス」という名前のそれを目に当てて、スマホに映し出された炎をみると、ぼやけた画像に。撮るよりも見ることを優先し、“光の始まり”を表現しました。

Energy Eater & Share Berry:“未来のみたい”をストーリー仕立てにして紐解く

Dチームのプロトタイプは架空のストーリー。舞台は情報やエネルギーなどあらゆるものが過剰になってしまった世界。サイボーグ化する者も出現し、エネルギー源は炭水化物から電化へと移行。ディストピアを妄想することで、“みたい未来”を見るためのテクノロジーについて考えました。ちなみに、マスクはメンバーのお手製。ストーリーテラーとして衣装までこだわっています。

夢:夢の世界を、脳の機能を利用して見える化

人間のメカニズムを利用して、見えないものの見える化に挑戦したEチーム。AIが作り出した画像と実際に撮影した画像を隣り合わせにプリントし、それを視界を狭めた手作りのメガネでみます。すると、左右の画像が頭の中で融合し、まるで夢の世界のような未来の景色が眼前に広がるという仕組み。脳の中でアウトプットすることで、閲覧者の潜在意識にも迫ります。

SHIN-SEIJI クラゲのジョージ:人間の感情を映し撮るクラゲをクリエイト

知らない間に押し殺している感情が誰にもあるはず。Fチームは“人間の思い”に着目し、空中浮遊生物“ジョージ”というクラゲを生み出しました。喜怒哀楽など気分を姿に反映させられるのが特徴で、プロトタイプで展示されたジョージには一体一体に誕生秘話付き。多くの参加者がジョージに興味津々で、「触ると感情が流入しちゃうかも⁉︎」というような質問も飛び交いました。

溶けあう世界:発表会の最中に完成⁉︎ 自己と他者の世界を接続

Gチームは、持ち時間の10分を使ってその場で作品を完成させる参加型の作品。写真では映し出せない視覚以外の感覚や他人の視点を可視化するために、協力者6名をその場で募りました。彼らは会場内に作った暗室へ誘導され、部屋の中の粘土やお香、BGMから感じた気持ちをペーパーにドローイングする役割を担います。最終的には、それらを統合して3Dプリンターで立体にする予定。ライブ感のある発表に、参加者の高揚感で会場が包まれました。


Memory Obscura:香りや肌触りを感じられる装置でリアルを追求

渋谷の街から“未来のみえる”を考えたHチームは、渋谷川の写真を例に、写真が視覚に頼った媒体であると定義。「Memory Obscura」と名付けたブラックボックスを利用して、被写体や風景の存在を視覚以外の方法で映し出す方法を実験しました。箱の中に設置されたものを触って、手に残った匂いを嗅ぎ、そのイメージを紙に書き出すまでがワンセット。手を入れるときには、スリルも味わえます!


優秀賞を獲得したのは、写真と文字を融合させたカメラフィルター。

バラエティに富んだプロトタイプばかりのなか、見事に最優秀賞に輝いたのは4名編成のCチーム“画文(エモ)”でした。「写真と言葉の相対を見たい」という思いから、3Dプリンターを使用してカメラに装着できる撮影フィルターを開発。表面には部首がデザインされており、レンズ越しに日常風景を眺めると、“画”と“文”が合体した新しい写真が完成します。アプリ開発もされており、専用のQRコードを読み取ればスマホで撮影することも可能です。

評価されたのは、プロトタイプの高い完成度。架空のショップ「画文カメラフィルター館」を軸にSNSを使った販促キャンペーンまで考案されており、全チームの中で最も世の中への広がりを想像できたことが大きな理由となりました。画文フィルターは、体験者の撮影、ひいては“未来のみたい”を行動に移すエモーションを引き出す。事務局メンバー満場一致の優秀賞となりました。

「考えること、学ぶことが好きなメンバーが集まっていた」、「一度やってみる!をみんなでできたから楽しかった」、「他のチームのプロトタイピングをみて、自分達の写真に対する解像度を上げられた」と、授賞式ではCチームのメンバー一人一人からコメントをもらいました。

何気ない日常のなかにあった、未発見の写真

プロジェクト期間中は、参加者のみなさんから毎日の生活の中で「これも写真?」と感じたものを募集する企画「#これも写真?」も開催していました。最終発表会では、多数の応募の中から特にコニカミノルタの“みたい”を広げた4つの作品に優秀賞が送られました。水島素美さんの「楽譜」、水落大さんの「日焼け」、みりんさんの「影送り」、鹿野貴司さんの「経年劣化した石のコースター」。みなさん、新しい視点の写真を紹介してくださり、ありがとうございました!


写真は現実を創る役割を担っていく

発表を受けて、北さんからは「素晴らしい発表を聞かせていただいて感無量です」との感想をいただきました。注目されていたのは、視覚メディアである写真に対して、視覚以外の感覚を使って写真の役割を拡張しようとしたプロトタイプが多かったこと。北さんは写真の未来に対して、次のように予想されました。

「今までの写真って、過去とか現在とかの現実を見る媒体でしたが、将来的にはただ単に現実を見るものじゃなくなると思うんですね。つまり、現実を創るようになるということ。これからの写真は視覚的に見えない何かをイメージ化して共有する役割を担っていくんだと、このプロジェクトを通してさらに強く感じました。この場で発表したプロトタイプが現実化する未来があるかもしれない。いい経験を私もさせていただいた。みなさん、本当にありがとうございました」。

約3ヶ月間に及ぶ、プロジェクトの全工程が終了︎

『みたいのプロトタイプ最終発表会』は、予定していた『f∞ studio program』のスケジュールの最終回。「未来のみたいって何?」という抽象的で自由度の高い問いに対して、参加者のみなさんはアグレッシブに向き合ってくださいました。答えのないプロトタイピングだったからこそ、他のグループの発表にも興味を持っていただけたのではないでしょうか。

発表中は終始和やかなムードでした。なかにはお子さん連れの参加者もいらして、世代を超えて“未来のみたい”について考えられたワークショップだったように感じています。プロジェクトの最後は、神谷の挨拶で締めくくりとさせていただきました。


「ここまで幅の広い“みたい”が見えるとは、事務局の誰もが想像していなくて正直な話、驚いています。今回、優秀賞に輝いたのはCチームでしたが、どのチームもそれぞれの観点で1位。皆さんのなかに新しい“みたい”の軸が出来上がっているはずです。ここで終わらせるのではなく、ぜひ引き続き探求してほしいと思います。未来を創っていく作業に入っていただければ嬉しいです。みなさま、改めてお疲れ様でした」


完成したプロトタイプは展示して一般公開

2023年3月15日から20日の5日間、「FabCafe Tokyo(ファブカフェ・トウキョウ)」にて『みたいの未来展』を開催しました。参加者の皆さんと掘り起こした「みたいの未来」のプロトタイピングを提示する企画展で社会の中にある“みたい”を刺激し、渋谷から多様な「みたい」の可能性を現像することを目的としました。こちらの展示を持って、『f∞ studio program #1』は本当に終わり。ご参加いただいたみなさま、本当にありがとうございました!

Next
Next

イベントレポート『f∞ studio program #01 in SHIBUYA』説明会